スポーツ系の学びガイド
スポーツの仕事につくときには、単にスポーツの知識さえあればいいというわけではな
く、職種ごとの専門知識が求められます。志望する仕事にあった学びができる学校を選
ぶために、スポーツ系の学びのジャンルを知っておきましょう。
スポーツ関係の仕事は専門知識が必要 早めにめざす職業を決めるのがベター
スポーツを取り巻く職業には幅広いジャンルの仕事があります。そして、それらの多くは専門的な知識が必要な職業です。一般大学やジャンルの違う専門学校を卒業してスポーツの仕事につくことも不可能ではありませんが、専門的な知識を学んでおけば、就職の際に大きなアドバンテージになります。
また、選手の体にふれる理学療法士などは、国家資格が必要です。大学や専門学校でスポーツビジネスを学んだけれど、やはり理学療法士になりたくなったという場合、資格を取るために一から勉強しなければいけません。そのため、めざす職業を早めに決め、その知識を学べる学校をしっかりと選ぶことが大切です。最低でも、「選手として活躍したい」「選手の競技をサポートしたい」「スポーツビジネスをしたい」「スポーツの楽しさを広める活動をしたい」くらいの方向性は、あらかじめ決めておく必要があると考えましょう。
ここでは、スポーツに関わる学びを5つの系統に分けて解説していきます。まずは、下の図を参考にして、自分がめざす職業に近い系統の学びを見てみましょう。
実際の大学や専門学校では、これらの系統ごとに厳密に分けられているわけではなく、複合した形でカリキュラムが組まれていることがほとんどです。仮に「トレーナーになりたいけれど、栄養士にも興味がある」という場合でも、学校によっては、そのどちらにも対応できるようなカリキュラムを組んでいる場合があります。進学先を決めるときには、学校案内パンフレットやホームページを見て、自分の将来の希望に合った学校を選びましょう。
また、カリキュラムの名称や学びの内容は学校によって異なります。オープンキャンパスなどにも積極的に参加し、教職員や先輩の話を聞いて、実際にどのような勉強ができるのかを事前に調べておくことが大切です。
経営学やマーケティングなど幅広いジャンルを学べるのが特長
スポーツ関連ビジネスについて学べる系統です。スポーツ産業の発展にともない、新規学部の開設も相次ぎ、多くの大学や専門学校で学べるようになりました。ひと口にスポーツビジネスといっても内容は幅広く、経営学の基礎からマネジメント、マーケティング、サービス、流通などが学べ、スポーツ業界のあらゆる面で活躍できる人材を育成しています。
また、簿記などのビジネス系資格の取得ができる学校もあるので、卒業後の進路も幅広く選べることが特長です。
スポーツビジネス系統の学校を卒業すれば、スポーツチームのスタッフ、スポーツ用品メーカー社員、スポーツイベントの運営スタッフ、スポーツメディア関係会社の社員など、さまざまな仕事につながっていきます。
また、経験を積んで独立すれば、フリーとしてスポーツマネジメントやスポーツジャーナリストの仕事のチャンスも得られます。
おもなカリキュラム
●スポーツ経営学
スポーツ産業における経営学や、経済学、体育学などを学び、スポーツビジネスの可能性を高める学びを行う。学校によっては、魅力あるスポーツイベント開催のための企画力を養うカリキュラムなども設けている。
●スポーツマーケティング学
スポーツイベントや、商品企画、流通、広告宣伝など、スポーツに関わるビジネスのマーケティング戦略を学ぶ。スポーツショップの経営を想定したカリキュラムを組み、販売士などの資格をとれることもある。
●スポーツメディア学
テレビや雑誌、インターネットなどで展開されるスポーツメディアを学ぶ。学校によっては「スポーツ関連の情報」全般を学ぶところもあり、スコアの分析や、選手のフォーム分析なども学べる。
●スポーツ施設管理運営論
予算の管理や、イベントの企画立案など、スポーツ施設を管理運営する上で必要な知識を修得する。また、一般の人たちの利用を想定し、生涯スポーツの発展などを研究する場合もある。
●スポーツ法学
スポーツ中の事故や、選手の肖像権など、スポーツにかかわる法的問題を研究するカリキュラム。チームや施設の運営で想定される諸問題を、法律にのっとって解決するための実践的な学びを提供する。
めざせる職業
学ぶ範囲が広いぶん、幅広い職種をめざすことが可能。スポーツメーカー、スポーツ用品店、スポーツクラブ、出版社や放送局などに就職する卒業生が多くいる。また、大学によっては上級情報処理士や上級ビジネス実務士などの資格取得も可能なので、スポーツ系に限らず将来の選択肢の幅が広がる。
●スポーツチーム職員
●スポーツ用品メーカー社員
●スポーツメディア関連
●代理人
●スポーツイベント運営スタッフ
●スポーツクラブ経営
…など
ハイレベルな競技者に囲まれ さらなるレベルアップをめざせる
おもに競技者をめざす人が学ぶ学問です。ハイレベルな生徒が多く集まるので、競技者としてさらなるレベルアップをめざすには最適な環境。実技だけではなく、スポーツを通した人間の心理や、スポーツの社会的意義なども学びます。卒業後はプロの競技者のほかにも、体育教師やスポーツインストラクター、スポーツクラブ運営会社への就職などの道を進む卒業生が増えてきました。
おもなカリキュラム
●実技
陸上競技、球技、水泳など、幅広いジャンルのスポーツを実践的に学ぶ。
●スポーツ心理学
練習や試合中に最良のパフォーマンスを発揮できるように、運動中に起こる心理現象を研究する。
●スポーツバイオメカニクス
力学、解剖学などを活用して、身体運動の仕組みを理解するための学問。競技技術の向上につながる。
めざせる職業
●スポーツ選手
●体育教師
●スポーツインストラクター
…など
児童から高齢者まで 幅広い世代とスポーツを結びつける
児童や生徒にスポーツを教える体育教師の育成や、国が推し進めている「生涯スポーツ」に関する学びなど、競技者以外の人とスポーツとの関わりについて学ぶ系統です。この系統の大学の多くで、教員免許取得がカリキュラムに含まれています。また、学校体育と併せて、高齢者の運動をサポートする学びができることも。卒業後は体育教師のほかに、医療・福祉施設の職員、地域スポーツ施設の職員などの道に進めます。
おもなカリキュラム
●体育科教育学
児童・生徒に対して、良い指導ができるようになるために必要な知識や実践の方法を学ぶ。
●コーチング学
より高いレベルで競技する人達を指導・育成するために必要な項目を幅広く学んでいく。
●生涯スポーツ論
高齢者などがスポーツに参加できるようになるための仕組みや地域施設のありかたなどを研究する。
めざせる職業
●体育教師
●医療施設職員
●福祉施設職員
…など
人間の心や体の仕組みを研究し 選手のパフォーマンスを引き出す
アスリートたちに寄り添い、心や体のケアをするトレーナーをめざすなら、この系統のカリキュラムがある学校を選ぼう。解剖学的な側面から人体の仕組みを理解したり、テーピングの方法などを実践的に学んだりします。また、最近では選手のメンタルを整えるメンタルトレーナーにも注目が集まり、スポーツ心理学を学べる学校も増えてきました。
おもなカリキュラム
●トレーニング学
選手の能力を最大限に引き出すためのトレーニングプログラムの作りかたなどを学ぶ。
●コンディショニング論
ストレッチや栄養摂取などを通して、選手のコンディションを整える方法を学ぶ。
●テーピング理論
ケガの部位に応じた最適なテーピング方法の理論を学ぶ。実技講習も含まれている。
めざせる職業
●アスレチックレーナー
●メンタルトレーナー
●フィットネスジムのトレーナー
…など
スポーツ医療やスポーツ栄養学のエキスパートを育成する学問
バイオメカニクスや栄養学、あるいはスポーツ心理学などを学び、選手をサポートする方法を学ぶ系統です。選手の心身をケアするという意味では上で紹介したトレーナー系統と似ていますが、この系統はより医学的な内容を学びます。ケガをした選手を回復に導く理学療法士や作業療法士などをめざす場合はこの系統を選びましょう。その道のスペシャリストをめざすためには、ぜひ学んでおきたい学問です。
おもなカリキュラム
●リハビリテーション学
理学療法士や作業療法士になるための知識を学ぶ。
●スポーツ医学
身体能力の強化やケガの予防を医学的に学ぶ。
●衛生学・公衆衛生学
健康増進に必要な知識を、スポーツを通して学ぶ。
●保健栄養学
スポーツ選手に必要な栄養管理の方法を修得する。
●救急処置実習
試合中などに起こる深刻なトラブルへの対処を学ぶ。
●精神健康論
医学、保健学的観点から精神面の健康づくりを学ぶ。
めざせる職業
●理学療法士
●柔道整復師
●作業療法士
…など