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▼2016学園祭に行ってきました in多摩美術大学

 学園祭は、お笑いライブやコンサート、講演会、パフォーマンス、模擬店グルメ、研究発表など趣向を凝らした企画が楽しめます。きっと読者の皆さんも、どこかのキャンパスに足を運んだことでしょう。学園祭は学生が主体となって行う一大イベント。普段は講義や実習を受ける真剣なまなざしの大学生も、この日ばかりは笑顔でお祭りを楽しんでいます。ガクセイト取材班は、素敵な絵画や創作に触れたい!と思い、11月4日に行われた多摩美術大学の学園祭「芸術祭」へ行ってきました。学生の作品に触れて、大満足の一日でした。

いざ、八王子キャンパスへ!

 多摩美術大学八王子キャンパスは、多摩丘陵の緑豊かな環境にあります。木々が黄色や朱色に変わり始める風景は、秋の訪れを感じさせます。
 来場者の流れにあわせて、正門から続く坂道を上っていくと、キャンパスの中央あたりで、多くの来場者が足を止めて、のぞき込んだり会話をしている姿が。ここは学生が出店しているフリーマーケットのエリアです。


ハンドメイドが魅力!フリーマーケットゾーン

 ポストカード、陶器のプレート、ガラスコップ、ネックレス、ブローチ、写真フレーム、Tシャツなどなど、どれもハンドメイドのものばかり。
 おすすめはどれですか? と声をかけると、
「この一輪挿しです。でも本当は売れてほしくないんです、お気に入りなので~」
 と笑顔で答えてくれた女子学生さん。作品販売って、なかなか悩ましいようですね。出店者は女子率が多いかなと思っていたら、男子学生グループという異色?の店が。
「僕らは工芸学科の学生で、陶芸、ガラス、金属の作品をそれぞれ持ち寄りました」
 陶のカップ、ガラスの花瓶やコップ、ネックレスやブローチなどがテーブルの上に並べられています。値段はどう決めているの?と尋ねると
「サイズや行程の手間からつけています」
 なるほど、フリーマーケットらしく手頃な値段が魅力です。


さあ、油画作品を鑑賞しよう!

 フリーマーケットをひと回りして、いざ作品展示へ。八王子キャンパスの施設は、学科・専攻ごとに学習棟があります。絵画東・北棟、情報デザイン棟、テキスタイル棟、ガラス棟といった具合です。これなら初めて芸術祭に来場しても、お目当ての作品がどこに展示されているか迷いません。
 絵画作品を求めて、真っ先に向かったのは絵画東棟。ここは油画の展示が中心です。棟内では場所を選ばず美大生が作品づくりをしたためでしょうか、廊下の床には油絵の具のハネが残っています。作品作りにかける勢いや熱気を感じさせます。
 展示室はグループごとになっていて、大胆な色遣いが印象的な作品や、人物の陰影をきれいに描いた作品、大きなキャンバスに描かれた作品、立体物との組み合わせなど様々な作品を楽しめます。その中で、私が気になった作品の制作者の方にお話しをきいてみました。


もしかして…納豆かな…

「藁苞(わらづと)の姫」
 油画専攻3年生、米山ゆりさんの作品です。壁に掛けられた藁の中に女性が包まれている姿は、もしかして納豆?と気になり、制作のきっかけについてお話しを聞いてみました。
 米山さんは食べ物の古代史を調べるのが好きで、納豆の起源を調べている時に、この作品のイメージが湧いたそうです。
「新潟地方では、藁包みの豆の間にも藁で作った人形を入れていたそうです。そこには納豆が美味しくできますようにと願いが込められていて、作り手の思いを知ったときに、わーっお姫様だ。藁包みの中でお姫様が願いを叶えるんだ!と感動して、頭に浮かんだ姿をドローイングで書き起こしたんです」
 書き起こしたドローイングは直ぐに手がけず、しばらく寝かせてイメージを熟成させたそうです。そのかわり作り始めたら集中して、2週間ほどで完成させたということです。
 作品づくりの発想は、米山さんのように興味をもって様々なことを調べ、知識を深めることが創作のベースとして生かされるのだと知りました。インスピレーションの裏には理由があることが分かり、とても関心しました。


つづいて、日本画の鑑賞に向かいます

 続けて絵画北棟へ。日本画の展示がここにはあります。東棟から受けた「動」の印象とは一転、ピンと張った「静」の空気感です。その中に細やかな描写の風景画や力強い色遣いの人物画などが展示されています。
 目を奪われたのは赤い背景に描かれた男性の姿でした。


迫力ある男性像、この作者とは…

「自画像としての健夫」
 日本画専攻1年生、加藤美雪さんの作品です。上半身裸の男の人を横から描いた作品名が、女性作品でありながら「自画像としての」とは、どういう事なのか?これは尋ねてみなければ。
 描かれているモデルの健夫という男性は、加藤さんの父親だそうです。モデル=父親、父親=自画像……むむむ、どういうことだろう???
「父と私は、よく似ているんです。物の収集が好きで、ゲームが好きで、派手な物が好きと共通点が多く。短気で怒りっぽい性格も一緒(笑)。だから思ったんです。父を描くことは、自分を描くことになるのではと」
 なるほど!作品名の謎が解けました。顔を似せて描くポイントも教えていただきました。それは目元と鼻の位置のバランスなのだそうです。そう言われて加藤さんと絵の健夫さんを見比べてみると……たしかに目元が似ていますね。


一転、静かな空気感の作品が…

 色鮮やかな作品展示の中にあって、モノトーンの作品にも心惹かれました。墨一色の濃淡で描かれた若い男性。姿は背景にとけ込み、静かなその表情は何を思うのか。


日本画の奥深さは、制作の工程にも表れる

「おまえの話」
 日本画専攻1年生、竹本明梨さんの作品です。絵の具をふわっと見せる表現と、はっきりした線をどのように描き分けるのか、これはテクニックが必要そうです。
「日本画では和紙を使います。和紙はそのまま使用すると、絵の具がにじんで波紋のように広がってしまいます。その特性を生かして背景を表現しました。その後、絵の具が紙に止まるように、和紙にドウサを引いてから人物を描いているんです」
 和紙を画材に使う場合、みょうばんを溶かした水ににかわを混ぜた液体=ドウサ(礬水)を塗るそうです。この加工によって絵の具が紙ににじまず、描画ができるようになるとのこと。
「ドウサは酸性の性質なため、そのままでは紙や絵の具の劣化が進みます。保存性を上げるためには、絵を描き上げた後にカキやホタテを原料としたゴフン(胡粉)を塗り、中性に変えなくてはならないんです。このように手順が多いので、手間を惜しまず取り組める人が日本画には向いているかもしれません」
 画材の特性を生かした竹本さんの作品は、とても幻想的に見えます。哲学的なテーマがありそうです。
「人は生まれながら、自分だけに見えているものがある。でも実はこれは他人とは少し違いがあるかもしれない。あるとき他人とそれを共有し、違いが明らかになったとき、自分だけのものは特別なものではなくなり、ごくありふれたものになってしまう。というテーマなんです。
 実は、二枚の絵で一つの作品になっているものなんですが、展示スペースの都合で、今回は一枚だけしか掛けられなかったんです」
 それは残念!二枚揃った展示で、もう一度観たいです。


グルメも学園祭でのお楽しみ!

 歩き回って小腹が空いたら、模擬店グルメでランチをとりましょう。おいしそうな匂いが鼻を刺激しますが、模擬店の看板やメニュー書きは目を楽しませてくれるほど本格的。本物の店舗のような出来映えは、さすが美大だなぁと関心させられます。小籠包、トッポギ、やき豚、カレー……。どれも美味しそうで、とても悩みます。

 お腹が落ち着いたので、また展示に戻りましょう。足が向かったのはデザイン棟。ここはグラフィックデザインやプロダクトデザインの展示が中心です。イラストや冊子、ポストカードなどが数多く並んでいる中、壁一面にクルマのデッサン画を貼りスポーツカーのクレイモデルを展示しているグループが。


カーデザインサークルと出会いました

「僕たちはクルマやモーターサイクルが大好きな学生が集まったサークル、PALです」
 と自己紹介してくれたのは、生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻4年生の伊藤智広さん(左)と、同1年生の三上貴大さん(右)の二人。サークルではカーデザインの仕方を楽しみながら身につけているのだそう。
「コンセプトの立て方から、パソコンを使ったスケッチ(線画)、レンダリング(色づけ)、CGのテクニックなどを駆使して作品として仕上げていきます」
 そのためには、モーターショーへ出向きリサーチをして、新しいデザインの物を作るコンセプトを立て、それに基づいたアイデアスケッチを起こしてプレゼンテーションをするといいます。この流れは、自動車メーカーのインターンシップでも行われることでもあり、サークル活動を通してメンバーは在学中に何度もその経験を積むことができます。伊藤さんは、自動車メーカーに就職が内定し、来春からカーデザインを手がけることになるそうです。
「私が企業インターンシップで経験したことは、アドバイスとして後輩に伝えて生かすことができるんです。サークルで作成した作品はポートフォリオ(作品集)として就職活動でも役に立ちます」
 三上さんは先輩からかけられたひと言が忘れられないそうです。
「スケッチを教わったときに、伊藤先輩から個性を出した線を書いた方がいい、自分の良さを殺すなと言われて、背中を押された気がしました」と心から嬉しかったといいます。
 デザイナーという同じ目標に向かう姿勢が、先輩と後輩を結びつける絆になっているようです。とても素敵なサークルと出会えました。


取材を終えて

「芸術の秋」として訪問した芸術祭でしたが、ただ作品展示を眺めるだけじゃなく、学生の方々に話を聞いてみると思いもよらぬ事や教えてもらえる事がありました。美大の学園祭を訪問したときには、
「どんな事を表現した作品ですか?」
と声をかけてみましょう。きっと、作者の思いに触れることができ、充実した一日になるはずです。

(ガクセイト取材班)