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<span>体系的に見た“理系の学び”</span> <span>理・工・農・薬</span>

体系的に見た“理系の学び” 理・工・農・薬

理系の学部は、理学、工学、農学、医療・保健学の4系統に大別されます。ここでは、理学、工学、農学、医療・保健学の薬学関係について、その内容や卒業後の進路などを説明します。
 
 

 
理学部は、自然科学の教育や研究をするところです。まだ解明されていない自然のしくみを追求することを目的とします。自然現象をみて、「どうしてだろう?」とか「不思議だな」と思ったことはありませんか。そんな疑問から、なぜそうなるのかを考え、その答えを探すことで、物理の法則や生命のしくみを探ります。誰も知らない自然界の“理ことわり”を解き明かすのが、理学部なのです。



■理学部という名称がなくても…


 私立大学の半分以上は理工学部を置いています。これは、理学部と工学部を合わせたもので、理学系の学科が含まれています。また、早稲田大学では教育学部、国際基督教大学では教養学部、桜美林大学ではリベラルアーツ学群に理学の教育や研究をする学科・コースが設置されています。

■どんな学科があるの?

 主な学科は、数学科、物理学科、化学科、生物学科、地学科に、情報科学科や生命科学科、地球科学科など。大学によって学科名や設置されている形が異なります。たとえば、京都大学理学部は理学科1学科のみを設置し、その中で数理科学系、地球惑星科学系、物理科学系、生物科学系、化学系という5つの“系”を置いています。茨城大学や熊本大学も理学部は理学科1学科制で、その中に各コースが置かれています。

■4年間で、どんなことを学ぶの?


 物理や数学、化学、地学、生物など高校で学んだ理数科目を発展させて、もっと専門的に、より細分化された理論や知識、実験などを学びます。
 入学するとまず、どんな分野に進む人にも必要となる数学、物理学、化学、生物学、地学の基礎知識を身につけます。また、基礎実験で、実験の基本的な技術を学びます。
 学年が進むにつれ、かなり細分化された専門科目を学ぶことになります。講義に加え、実験の時間もかかるので、レポートをまとめるのも一苦労です。
 多くの大学では、4年生になると研究室に所属し、卒業研究を行います。教授の指導のもと、先輩の大学院生や講師などに研究の手ほどきを受けながら、実験を行ったり、コンピューターに向かったりする日々が続きます。


■卒業するとどんな資格が得られるの?

 卒業すると“学士”(理学など)の学位が授与されます。大半の大学では、教員免許に必要な科目を履修すると、数学、理科の高等学校一種教員免許を取得できます。そのほか、大学によっては、学芸員などの資格が得られることもあります。

■卒業後の進路は?

 他の学部に比べて圧倒的に大学院修士課程に進む割合が高く、2015 年度の学校基本調査によれば、理学部の卒業生の進学率は4割を超えています。大学によっては、ほとんどの卒業生が、大学院に進学している場合もあります。理学部卒業後の就職先として、中学校や高等学校の教員が多いのが特徴です。企業では、情報通信業や製造業などです。修士課程修了後は、各種メーカーの研究職に就く人が多いです。
 大学院の博士課程を修了し、大学などで理論系の研究者になる人が多いのも、理学部の特徴です。コツコツと基礎研究を積み重ねなければならない地味な面があるものの、新発見を狙えるのもこの分野ならでは。純粋な学問としての研究にあこがれる人に向いている学部です。



 
工学部は、人間や社会に役立つものをつくることを目的としています。理学の知識を基盤にして、ものをつくったり技術を開発したりできるように、教育や研究が行われています。工学部はもともと、製造現場でリーダーとなるようなエンジニアを養成するためにつくられました。時代とともに、内容は大きく広がり、ロボットからロケット、コンピューターや都市計画などあらゆる産業分野に人材を送り出しています。


■理学部とどう違うの?


 どちらも理科や数学などの自然科学を扱う点などは、よく似ています。理学部では、基礎研究が中心で、なぜそうなるのかを知るために自然科学を扱いますが、工学部は応用研究が中心です。人や社会に役立つものをつくりたい、それをどのように実現するかを考えるために、自然科学を扱うのです。
 とはいうものの、理学部と工学部に明確な境界線があるわけではありません。理学の基礎知識がなければ、工学の技術は開発できませんし、理学の理論は工学がなければ、実用化できません。互いに支えあう学部なのです。

■どんな学科があるの?

 機械工学科、航空・宇宙工学科、電気・電子工学科、応用化学科、土木・建築学科、通信工学科、情報工学科など。科学技術の進歩とともに、電気工学がエレクトロニクス工学に、機械工学がロボット工学に、など名称を変更している例も多くみられます。

■4年間で、どんなことを学ぶの?

 先端技術を扱える、高度な知識をもつ人材の養成が求められています。そのため、必要な知識も多種多様。たくさんのことを学ばなければなりません。
 まず、基礎科学を学ぶのは、理学部と同じです。それに加え、電子や機械などの基礎を学びます。専門課程では、実習がたくさんあるのが特徴。専攻によりますが、機械の組み立て、回路設計やプログラミング、建築設計図の作製など、ものづくりの手法を身につけます。多くの大学では、工場などものづくりの現場の見学やロボコンのようなコンテストやプロジェクトへの参加などが導入されています。
 4年生になると卒業研究を行います。一人で研究を行う場合もありますが、チームを組んでロボットをつくったり、企業と共同で製品開発を行ったりすることもあります。
 日本企業のグローバル化にともない、ものづくりもグローバル化しています。対応できる人材を育成するため英語教育も重視されています。


卒業するとどんな資格が得られるの?

 卒業すると“学士”(工学など)の学位が授与されます。大半の大学では、教員免許に必要な科目を履修すると、理科、技術、情報などの高等学校一種教員免許を取得できます。建築学科では二級建築士の受験資格が得られます。なお、一級建築士の受験資格を得るためには、2年の実務経験が必要です。そのほか、学科により、測量士、機械設計技術者、自動車整備士などの受験資格が得られます。
 また、航空パイロットやヘリパイロットを養成するコースを設けている大学もあります( 東海大学、桜美林大学)。

卒業後の進路は?

 理学部と同様に大学院修士課程への進学率が高く、卒業生全体の4割近くが進学します。就職先では、自動車や機械、電化製品などを製造するメーカー企業が一番多く、建設業や情報通信業などが続きます。就職した人の約8割が専門職に就き、大学で学んだことを生かしています。工学部は修士課程修了者の就職率が理学部に比べて高く、修士課程修了後に就職し、エンジニアとして活躍する学生が多いようです。
 工学部は、実践的な知識や技術を学べ、応用研究を重視しているところです。将来、社会に役立つ技術を開発してみたい、ものづくりをするエンジニアになりたいという人に向いています。



 
農学=農業というわけではありません。農学部では、食糧の生産や資源にかかわる、人が生きるうえで欠かすことのできない知識や技術を学びます。この分野では、バイオテクノロジーや環境保全、食の安心・安全などの最先端の研究が行われています。人口の増加やエネルギーの枯渇の恐れが叫ばれるなか、食糧問題や環境問題がますます深刻になっています。農学分野は、それらの問題解決の鍵を握る注目の分野だといえます。


■実習で専門知識や技能を身につける


 フィールドに出る機会が多いのが農学部の特徴です。各大学には、農場や実習場があり、そこでは、さまざまな実習が行われます。
 農学科では、水田や畑で種まきから作物の管理、収穫までの実際を学びます。農芸化学科や畜産学科では、食品製造実習が行われ、チーズやソーセージをつくったり、缶詰を製造したりして、食品の加工の原理や技術をマスターします。醸造学のコースではワインづくりなども。水産学科では、練習船で洋上実習や屋外水槽施設で養魚実習が行われます。獣医学科では、臨床実習で、診断や治療の技術を身につけます。
 実習は数日間泊まり込みになることもあり、この時のクラスの仲間や教員との生活が卒業後のよい思い出になります。

■どんな学科があるの?

 農学科、農芸化学科、農業工学科、農業経済学科などの農業関連の学科に加え、森林科学科、獣医学科、畜産学科、水産学科、生物生産・資源学科なども含まれます。獣医学科は、獣医師養成が目的で、全国で16 の大学に設けられています。北海道大学と帯広畜産大学、岩手大学と東京農工大学、岐阜大学と鳥取大学、山口大学と鹿児島大学に共同の獣医学部・学科が設置され、注目されています。
 農芸化学科という学科の名称は、多くの大学では応用生命化学科、応用生物化学科などに変更されています。
 それぞれの学科は、農学部の中に含まれていることもありますし、水産学部、獣医学部のように学部として設けられていることもあります。

■4年間でどんなことを学ぶの?

 4年間の間に、多くの種類の専門科目とともに、さまざまな実習や実験、演習が組み込まれています。なお、獣医学科は6年制です。
 学科により異なりますが、一般的には、まず、生物学や化学に関連する基礎科目を学びます。その後、分子生物学や生化学などのより専門的な科目を学びます。3年生になると、応用科目や実習科目が増え、専門性を高めていきます。たとえば、畜産学科なら、家畜繁殖学や家畜生理学、農学科なら育種学や土壌学などの専門科目を学びます。4年生になると、卒業研究を行います。


■卒業するとどんな資格が得られるの?

 卒業すると“学士”(農学、獣医学、水産学など)の学位が授与されます。大半の大学では、教員免許に必要な科目を履修すると、理科、農業、水産などの高等学校一種教員免許を取得できます。農業高校や水産高校の専門科目の教員になれるのもこの学科ならではです。獣医学科では獣医師の国家試験受験資格が得られます。また、学科により食品衛生管理者、食品衛生監視員、測量士補、家畜人工授精士などの資格も得られます。

■卒業後の進路は?

 卒業生の進路で一番多いのは、大学院修士課程への進学で、学生のうち約2〜3割が進学します。公務員になる例も多く、国家公務員としては、農林水産省や林野庁、水産庁などに就職しています。あるいは、地方公務員になり、農業や水産、林産などの部署の専門職員として多くの人が活躍しています。
 企業への就職で圧倒的に多いのは製造業と卸売業・小売業です。多くの人が、食料品や飲料メーカーなどの商品開発や研究部門、技術部門などで専門知識を生かして就職しています。
 農学部は、食生活や生物資源にかかわる分野で専門技能を発揮できる仕事に就きたい人に向いています。



 
薬学部では「医薬品」はもちろん、人の生命にかかわるすべての化学物質─食品添加物、化粧品、環境汚染物質など─を研究対象とします。研究分野は、薬剤の開発や作用に関わる研究を行う“薬剤学”、医療の現場で使用される薬剤に関わる研究を行う“臨床薬学”、薬物を含め物質が人の健康に与える影響など衛生に関わる研究を行う“衛生薬学”などがあります。薬学部には薬剤師の養成、創薬研究者の養成という2つの側面があります。


■めざすのは薬剤師か、創薬研究者か


 名称は同じ「薬学部」でも、薬学部の教育制度には6年制(臨床系)と4年制(創薬系)があります。いちばんの違いは、薬剤師の資格が取れるかどうかです。
 病院や薬局で働く薬剤師の資格取得をめざすのが6年制で、4年制では医薬品の創生に携わる研究者や技術者の養成を目的としています。
 薬学部を設置する全国73 大学(国公立17・私立56)。全校に6年制がおかれ、すべての国公立大学と15 の私立大学では6年制と4年制を併設しています。なお、両者を併設する大学では、入学時に所属を決めないで3年次または4年次進級時に決める大学も少なくありません。

■どんな学科があるの?

 6年制は薬学科がほとんどで、ほかに医療薬学科、医療薬物薬学科、臨床薬学科、医療衛生薬学科などがある。
 4年制は薬科学科・創薬科学科を中心に、生命薬科学科、生命創薬科学科、医療ビジネス薬科学科などがあります。近年注目されている東洋医学ですが、横浜薬科大学では73 薬科大学のなかで唯一漢方薬学科(6年制)を設置しています。

■6年間、4年間でどんなことを学ぶの?

 カリキュラムは6年制、4年制とも3年次まではほぼ同じです。1年次は教養科目や薬学勉強の準備のための科目を、2年次からは薬学基礎科目と専門科目群を学びます。専門科目群には物理薬学系、化学薬学系、生物薬学系、医療薬学系などの科目があり、例えば化学薬学系では「生薬学」を学びます。3年次ではさらに薬学の専門知識を深め、実験技術を修得するための専門科目を履修します。
 4年制では4年次になると、創薬研究者の養成を目的とした創薬科学専門科目を学習。また、各研究室に所属し、卒業研究をまとめていきます。
 6年制では4年次に医療創薬専門科目を履修し、専門性をさらに高め、実習もより本格的な内容へと移っていきます。5年次からは6年制教育の柱となる、病院および薬局での実務実習がスタート。22 週にわたり現場の医療を体験することで、臨床実務能力を身につけます。6年次には学びの集大成としての卒業研究に取り組むとともに、臨床薬学を中心に学びます。後期になると、多くの大学では薬学演習などとして、集中的に国家試験対策を行います。


■卒業するとどんな資格が得られるの?

 卒業すると“学士”(薬学、薬科学など)の学位が授与されます。薬学科、医療薬学科、臨床薬学科など6年制の学科では薬剤師の国家試験受験資格が得られます。このほかに、登録販売者(受験資格・実務経験免除/6 年制・4 年制)、医薬部外品・化粧品・医療用具の製造所の責任者(6年制)などの資格を取得できます。また、教員免許に必要な科目を履修すると、理科の中学校・高等学校の一種教員免許を取得できる大学もあります。

■卒業後の進路は?

 6年制卒業生の大半は資格を生かして薬剤師として就職します。就職先は病院・診療所、保険薬局、ドラッグストアなどが中心で、なかでも調剤薬局に就職する人が近年増えています。ほかに治験コーディネータの職に就いたり、あるいは公務員として保健所・衛生研究所などに就職したりします。また、大学院博士課程に進学する人も。
 4年制では大学院修士課程に進学する人が多くなっています。製薬会社などメーカーの多くの採用基準が大学院修士課程修了だからです。大学院で研究能力を身につけたあと、製薬会社の研究・開発者、バイオ系会社などの研究・技術者として多くの人が活躍しています。
 大学院への進学率は理学、工学、農学など他の系統に比べると低いものの、医療・保健系統のなかでは最も高く卒業生の約1割を占めています。