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 ホーム > 受験生とカラダTop > No.6 受験生のみなさんへ、大和田ドクターからのメッセージ
 
受験生とカラダ 受験に強くなるカラダとココロの知識No.6 勉強の合間に即実践! リラックス体操
心身にどうしても負担をかけがちな受験勉強を乗り切るために、「生活リズム」「リラックス体操」など、さまざまな工夫をお伝えしてきた本連載。さて、みなさんは、ただ大学に入学するためだけに受験勉強に臨むのでしょうか? いえ、そんなことはありません。受験はあなたにかけがえのないなにかをもたらす、人生の重大な一局面なのかも――大和田ドクターからみなさんへ、連載の最後に送るメッセージです。
受験勉強ってなに?

 皆さんは毎日元気に学校に行って授業を受けて、ちょっと居眠りしたり、お弁当を食べたり友達と笑い転げていることでしょう。寝坊したり、小説にはまって夜更かししたり。

 勉強の方といえば、暗記、暗記でいやになってしまっているかもしれません。こんなことがいつまで継続するのか、無限に続く難行のようです。

 知らない新しい分野が出てきて、急に成績不振になって焦ったり、得意な箇所ばかりやってしまって不得意な科目は後回しにしてしまったりすることも良くあります。小テストでほぼ満点を取ったりして達成感を得る一方で、全国統一模試で判定が悪くて敗北感を味わったりもします。私もそうでした。

 それでも、数年後には必ずなんらかの結果がもたらされ、それを甘んじて引き受けることになるでしょう。けれども、それはゴールでは無く、長い大人の人生の始まりです。

 でも、そもそも私たちは勉強が嫌いなのでしょうか?無意味な作業なのでしょうか?

「避けられない変化」を「進化」にさせる「勉強」

 これまで数回にわたり、ガクセイトでコラムを配信させていただきました。世の中に無数にある「上手に受験を切り抜ける作戦」や「効率よく勉強する方法」といったテクニックでは無い、脳を健康に保ち元気に受験を乗り切るヒントをお伝えしようとしてきました。

 昨年、全国に記事を配信している共同通信社を通して、「医療航海術の北極星」という連載コラムを執筆しました。大人向けですが、このコラムとほぼ共通の健康を保つ話題です。

 今日お伝えしたいことは、「“私たち人間は変化し続ける存在”であり、“勉強”はその変化を進化に変えてくれる良い方法である」という一点だけです。それだけです。私たちはそれを忘れてしまいがちになります。

 私は、神経内科という脳の治療を行う専門医です。大学では、神経細胞を培養して細胞の生死について研究していました。内科全般の加療を行う総合内科専門医でもあります。なので、常日頃から脳の仕組みのことを考えてきました。

 おぎゃあ、とこの世に赤ちゃんとして生まれてから、人間は寿命が尽きるまで変化し続けます。そして、外の世界のことを「勉強」し続けることで、豊かな人生を送ることが可能となります。

 私たちは日本語を話せるし、ダンスも踊れるし自転車に乗ることもできる。複雑なゲームだってできる。それは、脳の訓練である「勉強」のたまものです。生まれてから人間は、脳を変化させていきます。

 「脳の訓練=勉強」だとすると、勉強は好きとか嫌いとか判別できるものではなく、生きていくために脳が行う自然な行為だといえます。受験勉強は、期間限定で決められた課題をたくさん行う必要があるため少し工夫が必要なだけです。

「早寝早起き」がもたらすもの

 具体的な工夫の例をみてみましょう。最初は、早起きは三文の得の話。

 「高校1年になってから地を這うような成績に下がってしまって、出席日数も危ないんです」と、以前ある母娘が来院されました。頭がすっきりしなくて、頭痛がしたりして朝起きられなくて欠席がちとのこと。

 昼過ぎに起きるので、夜目がさえてしまって寝られなくて他の病院から睡眠薬が処方されていました。さらに、大量の頭痛薬と血圧を上げる薬も。

 私は彼女に伝えました。「人間にはサーカディアンリズム(参照:受験生とカラダ 第2回「生活リズムが勝負の鍵をにぎる」)が重要である」と。人間の複雑で繊細なシステムの不調を、薬が全て解決することはムリ。薬の副作用を抑えるために、薬を飲むという悪循環にもなります。

 彼女は「早寝早起き」と新年の書き初めをして、睡眠薬の助けを借りずに生活リズムを整えるようにガンバリました。みんなに目標を宣言することをミッションステートメントと言います。書き初めは、ミッションステートメントの見地からも日本の良い習慣です。ちなみに私の今年の書き初めは、「そろそろ本気」(笑)にしようと思っています。

 早朝にラジオ体操や、肩こり体操(参照:受験生とカラダ 第5回 「勉強の合間に即実践!リラックス体操」)もしてすぐに覚醒モードに入れるようになりました。なんと、朝食前に前日の世界史の復習ができるようにもなりました。

 すぐに始められないスタートの遅い人は、実は、いつまでたっても始めることができないとされています。人は物事を先送りするほど、開始することが指数関数的に困難になる脳の性質を持っているからです。逆に、いったん始めてしまえば作業興奮ということが起きてきて「乗って」きます。とにかく、すぐに始めることが肝心。

 早寝早起きの彼女は、めまいも無くなり、時々起きる頭痛は専用の薬で解決していきました。起きられないのは、血圧が低いからじゃなくてリズムが崩れていただけだったわけです。時間に沿った脳の生理的なリズムに、意思の力で逆らうことはできません。

 彼女は今や、臨床心理士スクールカウンセラーになろうと大学院を目指しています。先日お会いしたときには、「でも、ときどき昔のクセで朝寝坊しちゃうんですけど……」とぺろっと舌をだして笑っていました。

受験に失敗は無い

 次は生き方上手な男の子の話をしましょう。彼は、難関国立大学の工学部を目指していました。クリニックの近くにお住まいだったので、風邪をひいたときなど時々来院されていました。運動も得意でハンサムだったので、バレンタインデーにはチョコレートをたくさんもらう、挫折とは無縁に見えた人でした。

 受験も終わったある日、しばらくぶりに彼がやってきました。「めざしていた大学、落ちちゃったんです。大失敗。でも、受かった水産系の海洋工学が楽しくて……今度、海のある地方の教養学部に行くのでインフルエンザワクチン受けておこうかな、と思って。そのときは失敗に思うことが、他の何かを生みだすこともあるんですね」とおっしゃっていました。

 大きな挫折を乗り越えた彼に、「そのとおり。どの道にすすんでも、腐ったりしないでその場で全力を尽くせば道は拓(ひら)けると思うよ」とお話ししました。彼は気持ちもハンサムなんだなぁと思いました。

 私の人生も、予想しない失敗や出来事による紆余曲折の連続でした。いくつかの救急病院に赴任して勤務したり、大学院で研究をしたりしました。そのおかげで、今は診療所を開業して、本を書いたり御茶ノ水にある東京医科歯科大学で医学部の学生さんの授業を受け持ったりするようになりました。私は失敗が生み出す幸運に支えられてきました。

 クリニックを掃除したあと、早朝の地下鉄東京メトロの中で若い皆さんへのメッセージを打っているなんて数年前には想像もつかなかったことです。人生はまさに「万事塞翁が馬(塞翁のエピソードは調べてみてください)」。彼もきっと、大海原で何かを見つけることでしょう。

脳の持つ「クセ」を知ろう!

 人間の脳は、この小さな体積でよくもこれだけ働けると思わせる驚異の能力を発揮します。その効率の陰には、脳に特有の「クセ」が存在します。  

 「現在の自分を元にして未来のことを想像したがる」ことと「将来起きる変化を低く見積もる」という二つの脳のクセを覚えておいていただきたいと思います(参照:『明日の幸せを科学する』ダニエル・ギルバート著 早川書房)。この脳のクセこそが、冒頭の「変化することの重要性を忘れさせてしまう犯人」です。

 もしあなたが「どうせ私にはそんな才能ないからやってもムダ」と考えているなら、「現在の成績のイメージから脱することができず、未来の変化を低く見積もる」という脳のクセにやられてしまっていることを意味します。私もそうなりがち。超モッタイナイ。

 だって、たった今単語やイディオムを一つ、たった今数式を一つ暗記するだけで、数分前には解けなかった同じ問題がスラスラ解けるようになります。このように、脳はすばやく変化します。勉強は、「脳のクセからの脱出方法」を教えてくれるのです。

 字数の関係で詳細には触れませんが、無味乾燥な暗記や訓練であっても、それは大切な自制心や根気を鍛えてくれる、IQを超える魔法です。素振り練習を地道にこなした人間だけが試合に勝てます。受験は、答えが用意されている大量の問いに忍耐強く解答していく脳の訓練です。これは、正解も示されない応用問題の連続の人生を生きていく上でとても役にたちます。

 受験は、自分の脳のクセとの戦い(克己)であり、自分を進化させる良い経験です。 生きている限り、大人も子供も変化し続けます。人生の一瞬一瞬に全力を尽くし、より良く変化し進化する自分を一緒に楽しんで生きていきましょう。機会があれば、続きをお話しすることができるかもしれません。

 それまで、ごきげんよう!

大和田潔先生プロフィール
1965年、東京生まれ、東京都立両国高校卒。
福島県立医科大学卒業後、束京医科歯科大学神経内科にすすむ。
東京都立広尾病院、武蔵野赤十字病院にて救急診療の後、東京医科歯科大学大学院にて基礎医学研究を修める。青山病院医長を経て、秋葉原駅クリニック院長。
頭痛専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、東京医科歯科大学臨床教授、米国内科学会会員、医学博士。著書に『頭痛(新版)』(新水杜)、『副作用』、『知らずに飲んでいた薬の中身』(祥伝社新書)、『こどものおいしゃさん』(篠原山版新書)など。医療コラムを連載しており、医療分野のメディアでの紹介、講演会など多数。
http://www.ekic.jp
 
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