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▼わが子に合った大学選び -未来を見据えて- 倉部史記さんインタビュー


大学受験は、子どもの人生における大きな節目。できるだけのサポートをしたいと考えるのは当然でしょう。ところが、親御さんの世代とは受験システムや大学の状況が大きく変わり、さらに世の中全体がものすごいスピードで変化しています。そんな今、どのようにわが子に合った大学選びができるのでしょうか。若者が未来に希望を持てる社会づくりに取り組むNPO法人NEWVERYの理事で、高校生の進路選択に関するアドバイスに携わってきた倉部史記先生にお聞きしました。
『わが子の教育 大学情報編2017』にて掲載。(9/28発行/学研アソシエ)

15年後の社会を見据えて長い目で進路を考える


--進路を考える時の視点として、大切にするべきことを教えてください。

倉部 私は、「15年後の社会を生き抜くために」など、「15年後の社会」を枕詞にした講演を多く行っています。それは、先のことを考えずに進路を選ぶ方が多いと感じているからです。目の前の受験で言えば、毎年、「文高理低」や「理高文低」だと報道されますが、それらは5年程度で入れ替わります。受験時に就職に強い学部が、3年後の就職活動の時にも強いとは限りません。もっと言えば、高校1年生の時に「私は数学が苦手だから、文系にします」などと言ってしまう高校生がいまだに多いことに危機感を持ちます。もう少し将来を見てほしいという思いがあります。


--社会自体も変わっていきますからね。

倉部 現在の子どもたちの65%が、今は存在しない新しい職業に将来は就くというデータがあったり、AIやロボットに仕事を取って代わられると言われたりしています。大人にとってはこうした話題は身近なのに、大学受験となると、いまだに「地元の国立大学に進学しなさい」とか「法学部あたりに行けば就職は手堅いだろう」などと言ってしまいます。高校生にも、周りにいる大人にも、それは違いますよね、というメッセージを伝えたいと思います。30年前、「企業の寿命は30年」という説が話題になりました。ところが今、同じ調査をすれば、企業の寿命は18年と言われます。新卒で大企業に入っても、その会社が定年までもたないわけです。親御さんも、そうした情報は持っているはずなのですが……。


--わが子のこととなると、怪しくなるわけですね。

倉部 そうです。「雇用保蔵」といって、企業の労働者数と生産量のバランスが適切かどうかを見るための指標があるのですが、雇用保蔵を見ても、労働者数が足りていない時期と余ってしまう時期が、あまり長くないスパンで繰り返すのです。ある大学の先生から聞いたお話ですが、その先生が若かった時は、半導体業界が人気で、当時、一番優秀な学生が半導体業界に就職したそうです。その彼らが、今、他の業界に移れず、困っているのです。


--シビアな話ですね。

倉部 ですから、高校生にとって大事な人生の選択である大学受験の時に、将来は変わっていくことを伝えないといけないと思うのです。その際、どのように変化していくのかを予測することは不可能であることも伝えるべきです。


「進路選び」ではなく、「進路づくり」を意識する


--先を見据えて進路を考える時、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。

倉部 私は、従来の「進路選び」ではなく、「進路づくり」をする指導をしています。そもそも、なぜ、進路「づくり」を広めたいかといえば、大学に入学した後に困っている人が多いからです。「大学がもし100人の村だったら」というデータの数字を紹介しましょう。データによると、入学生100人のうち12人が中退し、13人が留年、30人は就職せずに卒業し、14人は3年以内で最初の会社を離職します。つまり、大学を4年で卒業し、就職して、3年以上勤めるのは、たった31人です。


--ひと昔前のように、「大学に入りさえすれば一生安泰」ではないということですね。

倉部 すべての留年や転職が悪いと思いません。海外留学をしていたからなど、理由にもよります。ただ問題は、大学に受かりさえすれば、「4年で卒業して就職して、3年以上勤める31人」になれると思っている人が、本人はもとより、親御さんにも、下手をすると高校の先生にも結構多いことです。大学は、目的を持って学ぶ人には大変意味があり、世界を広げてゆける場ですが、「受かったら就職させてもらえる」という感覚だと危ない。そんな人が最近増えているのです。


--大学を選んで、入学するところでおしまいという時代ではないわけですね。

倉部 中退と留年を合わせると25人、4分の1です。最近は入学生の半分程度は、何らかの奨学金を借りていますので、中退や留年をすると、すぐに奨学金を返さなければならない状況も出てきます。そのために経済的に困窮して、留年をきっかけに中退する羽目になったり、中退して借金だけが残ったりするケースも増えています。こういう状況だとしたら、進路は「選ぶ」というより、進路を「つくる」という考え方のほうがふさわしいと考えたわけです。


地図よりコンパスが大切な時代に突入


--進路選びと進路づくりの違いを具体的に教えていただけますか。

倉部 これまでの進路選びは、「将来就きたい職業は?」「そのためには〇〇大学に」「学部は〇〇に」というように、地図上で、ゴールから道筋を逆算するやり方でした。でも、先ほど言ったように、今の仕事の65%が入れ替わり、地図のほうがどんどん変わっていってしまいます。だとしたら、大事なのは地図より自分の進む方向を示す「コンパス(方位磁針)」。大学で自分の武器を一つひとつ見つけて、社会の変化に対応できる「自分の生き方の羅針盤」を持つことです。


--自分のコンパスを手に入れるには、どうしたらよいのでしょう。

倉部 自分は何が楽しいのか、どういう時に時間を忘れるほどのめり込み、どんな苦労でも乗り越えられるのか、その感覚が大事です。なぜなら、どんな職業に就いても、一生勉強しないといけない世界になりそうなので、親が「これなら食いっぱぐれないぞ」と言った職業に就いて、いやいや苦労を乗り越える状態では、競争に耐えられません。だとしたら、自分のコンパスは何なのかを探っていく体験が必要です。


--それを行う場所が大学ということなのですね。では、大学でどんな体験をすることが大切なのでしょうか?

倉部 お客様扱いをしてくれる場では、コンパスを見つけるのは難しいと思います。本気で挑戦する体験をして初めて、自分が本当にそれをやりたいかがわかります。以前、ある予備校の研究所で研究員をしていた時、いろいろな大学の教授の研究室に、選抜した高校生を参加させる実験的プログラムに関わっていたのですが、とても貴重な成果が得られました。


--興味深い取り組みですね。

倉部 一例を紹介しますと、ロボット好きな高校生を15名選んで、ロボット工学の権威の研究室に、毎週日曜日、3か月間通わせて、授業とロボット作りを体験させました。このケースでは、ほとんどの高校生の目的意識が上がり、最終的に、自分たちの体験をスタンフォード大学で英語を使ってプレゼンするほどの成果をあげました。その一方で、どのテーマでも15人中、3人から5人、必ず進路を変える高校生が出ました。「自分が好きだと思っていたロボットは、完成品のイメージでしかなかった」などという理由です。実際にはんだごてを握ってロボットを作ってみると、イメージしていたロボット作りとは随分違ったのでしょう。ロボット開発は設計図通りに作っても、うまく動くことは稀で、原因を探して何日も徹夜するような世界です。ここまで体験して、本当にやりたいことに気づくのです。


--すべての分野で言えそうですね。

倉部 そうです。近年、看護学部が大人気ですが、看護の仕事は向き不向きがはっきり分かれます。私が外部評価委員をしている公立の看護大学の場合、優秀な学生が多く集まります。ところが、座学を終え、実習が始まるタイミングで、「こんな厳しい世界は無理」とか「性格的に合わない」と言って、退学する学生が何人かいます。看護師なら地元で手堅く就職できると、周りの大人に言われて入学したものの、本当の看護に触れ始めるとミスマッチが露呈するのです。そこでこの大学では、高校生のうちから、看護の厳しい面を理解してもらう取り組みを行っています。必ず「看護師、無理です」という子どもが現れますが、それが本人のためにも、大学のためにもいいだろうという判断です。


--ただ、自分のやりたいことを定められない高校生は多いと思います。

倉部 そういうご相談も、よくいただきます。そこで、重要なのは、“武器は一つでなくてもいい”という考え方です。大学の4年間、その学部の学問体系を学ぶことは非常に重要な武器になりますが、これだけでその後の人生を生きていくわけではありません。例えば、工学部に「実はマネジメントにも興味があって、将来はITで起業したい」とか、「人と話すのが苦手だったので、頑張って接客のバイトもした」という学生がいるとします。彼らは「工学× 経営」、「工学× 接客能力」のように、いろいろな物事への関心を自分なりに掛け算しています。そうやってその人の武器ができていくと思います。ちなみに、ものづくりが好きな人は経営に興味がなかったり、接客が苦手だったりする人が多いので、工学部出身でマネジメントに興味があり、接客ができる人は希少で就職に強いですね。


--確かに、それは社会で感じることです。

倉部 そこで、高校生には自分のやりたいことを探しなさいと言う一方で、狭くとらえたり、一つに絞ったりする必要はないと言っています。例えば、英語が得意だと国際系の学部を考えがちですが、べつに法学部でもいいです。すると法学部で専門知識を身につけ、契約の専門家として国際的なビジネスで活躍するという将来が生まれます。専門領域に精通したうえで、外国語コミュニケーション能力を発揮する、こういう人をグローバルスペシャリストと言います。


データと実体験で、大学の本当の姿を知る


--合う大学を探すためには情報集めも重要です。Webなどで得られる大量の情報の見極め方はありますか?

倉部 「他人にとって良い大学が、自分にとってもそうだとは限らない」、これが大前提です。自分の評価軸で大学の価値を測らなければダメです。自分は大学に何を求めるかを考えながら、さまざまな情報を見てほしい。情報には、数値でわかる情報と、体感で感じる情報の2種類があります。数値でわかるデータに関しては、複数のデータを突き合わせてください。留年する学生が多いというデータがある大学でも、就職のデータが良好なら、厳しい教育で質の高い学生を育てて卒業させていることになります。また、似た特色を持つ大学を比較して、片方が大学院への進学率が高く、片方は4年で大企業に進学する率が高いとします。こうなると、受験する側が何を望むかによって、良い大学は異なります。こうしたデータの比較は、高校生よりも保護者に一日の長があると思うので、試していただきたいですね。


--一方の体感する情報を得るには?

倉部 オープンキャンパスを利用し、模擬授業を受けるのも良いと思います。私は、学びたいことが決まっていない場合はもちろん、決まっているという子どもにも、いろいろな学部の模擬授業を受けることを勧めています。実際に、絶対に心理学を学ぶと言っていた子どもが、マーケティングの模擬授業がおもしろかったと帰ってきたこともあります。お子さんが志望学部は決まっていると言っても、まだまだ再考の余地があったりします。また、オープンキャンパスは、質問や相談を受け付ける場があるのも大きなメリットですので、遠慮せずに何でも聞いてください。ブースに学生さんが居る場合は、先輩に聞いてみましょう。その時、サークルやアルバイトのことばかりでなくきちんと学業について聞くのがポイントです。公開されていないリアルな就職状況などの聞きにくいことは、親御さんが聞いてあげるといいでしょう。


--ただ、大学の普段の様子はなかなかわからないですね。

倉部 正直なところ、数値では見えにくい、例えば小さい短大のアットホームな良さなど、肌感覚で感じる教育の特徴や雰囲気は、普段の授業を見ないと伝わらないと思います。私が理事を務めるNPO法人NEWVERYでは、高校生が大学生と一緒に授業を受けるなどして「大学生の普段の一日」を体験するプログラム 『WEEKDAY CAMPUS VISIT』を実施しています。実は、このプログラムの参加者は、事前にオープンキャンパスも体験している場合が多いのですが、「アクティブラーニングの授業でワクワクして大学の授業が楽しいとわかった」とか、「先生が親切だった」とか、また、「授業が難しいことがわかって高校の授業を頑張ろうと思った」というような、オープンキャンパスでは見えなかった気づきなどの感想が多いです。


--普段の姿を見せることは、大学にとっては勇気がいりますね。

倉部 はい。大学の授業には、非常に積極的で真面目な大学生もいれば、教室の後ろの方にいる消極的な学生もいます。そして高校生はそのどちらの大学生も見ています。プログラムの最後に参加者に「あなたはどっちの大学生になりたいか」を必ず問います。すると、何のために大学に行くのか、高校生なりに思うところは出てきますので、その意味では、進路選びから、進路づくりへモードを変えるためにも、大学の普段の授業は良い教材だと思いますね。


■WEEKDAY CAMPUS VISIT
NPO法人NEWVERYが実施している、高校1~3年生が「大学生の普段の一日」を体験するプログラム。大学生と一緒に授業を受けるなどして、オープンキャンパスでは分からない、普段の大学の様子を知ることができる。事前申込が必要。
● 問い合わせ先
 NPO法人NEWVERY 電話 050-1071-8324(受付時間は平日10:00~19:00)
●参加申込:専用ウェブサイトで受付   http://wdcv.net


【倉部史記(くらべしき)】
「進路づくり指導」講師、NPO法人 NEWVERY理事。
企業広報のプロデュースを手がけた後、私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員および大学連携プロデューサー、フリーランスを経て現職。「進路選択」ではなく「進路づくり」という視点で、さまざまな団体やメディアと連携しながら企画・情報発信を行っている。文部科学省「大学教育再生加速プログラム(入試改革・高大接続)」のペーパーレフェリーを務めるなど、文教政策にも関わり、全国の高校や進路指導協議会からの依頼で研修講師を務める機会も多い。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混交』(中公新書ラクレ)、『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。