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心身にどうしても負担をかけがちな受験勉強を乗り切るために、「生活リズム」「リラックス体操」など、さまざまな工夫をお伝えしてきた本連載。さて、みなさんは、ただ大学に入学するためだけに受験勉強に臨むのでしょうか? いえ、そんなことはありません。受験はあなたにかけがえのないなにかをもたらす、人生の重大な一局面なのかも――大和田ドクターからみなさんへ、連載の最後に送るメッセージです。
● 受験勉強ってなに?

 皆さんは毎日元気に学校に行って授業を受けて、ちょっと居眠りしたり、お弁当を食べたり友達と笑い転げていることでしょう。寝坊したり、小説にはまって夜更かししたり。

 勉強の方といえば、暗記、暗記でいやになってしまっているかもしれません。こんなことがいつまで継続するのか、無限に続く難行のようです。

 知らない新しい分野が出てきて、急に成績不振になって焦ったり、得意な箇所ばかりやってしまって不得意な科目は後回しにしてしまったりすることも良くあります。小テストでほぼ満点を取ったりして達成感を得る一方で、全国統一模試で判定が悪くて敗北感を味わったりもします。私もそうでした。

 それでも、数年後には必ずなんらかの結果がもたらされ、それを甘んじて引き受けることになるでしょう。けれども、それはゴールでは無く、長い大人の人生の始まりです。

 でも、そもそも私たちは勉強が嫌いなのでしょうか?無意味な作業なのでしょうか?

● 「避けられない変化」を「進化」にさせる「勉強」

 これまで数回にわたり、ガクセイトでコラムを配信させていただきました。世の中に無数にある「上手に受験を切り抜ける作戦」や「効率よく勉強する方法」といったテクニックでは無い、脳を健康に保ち元気に受験を乗り切るヒントをお伝えしようとしてきました。

 昨年、全国に記事を配信している共同通信社を通して、「医療航海術の北極星」という連載コラムを執筆しました。大人向けですが、このコラムとほぼ共通の健康を保つ話題です。

 今日お伝えしたいことは、「“私たち人間は変化し続ける存在”であり、“勉強”はその変化を進化に変えてくれる良い方法である」という一点だけです。それだけです。私たちはそれを忘れてしまいがちになります。

 私は、神経内科という脳の治療を行う専門医です。大学では、神経細胞を培養して細胞の生死について研究していました。内科全般の加療を行う総合内科専門医でもあります。なので、常日頃から脳の仕組みのことを考えてきました。

 おぎゃあ、とこの世に赤ちゃんとして生まれてから、人間は寿命が尽きるまで変化し続けます。そして、外の世界のことを「勉強」し続けることで、豊かな人生を送ることが可能となります。

 私たちは日本語を話せるし、ダンスも踊れるし自転車に乗ることもできる。複雑なゲームだってできる。それは、脳の訓練である「勉強」のたまものです。生まれてから人間は、脳を変化させていきます。

「脳の訓練=勉強」だとすると、勉強は好きとか嫌いとか判別できるものではなく、生きていくために脳が行う自然な行為だといえます。受験勉強は、期間限定で決められた課題をたくさん行う必要があるため少し工夫が必要なだけです。

● 「早寝早起き」がもたらすもの

 具体的な工夫の例をみてみましょう。最初は、早起きは三文の得の話。

「高校1年になってから地を這うような成績に下がってしまって、出席日数も危ないんです」と、以前ある母娘が来院されました。頭がすっきりしなくて、頭痛がしたりして朝起きられなくて欠席がちとのこと。

 昼過ぎに起きるので、夜目がさえてしまって寝られなくて他の病院から睡眠薬が処方されていました。さらに、大量の頭痛薬と血圧を上げる薬も。

 私は彼女に伝えました。「人間にはサーカディアンリズム(参照:受験生とカラダ 第2回「生活リズムが勝負の鍵をにぎる」)が重要である」と。人間の複雑で繊細なシステムの不調を、薬が全て解決することはムリ。薬の副作用を抑えるために、薬を飲むという悪循環にもなります。

 彼女は「早寝早起き」と新年の書き初めをして、睡眠薬の助けを借りずに生活リズムを整えるようにガンバリました。みんなに目標を宣言することをミッションステートメントと言います。書き初めは、ミッションステートメントの見地からも日本の良い習慣です。ちなみに私の今年の書き初めは、「そろそろ本気」(笑)にしようと思っています。

  早朝にラジオ体操や、肩こり体操(参照:受験生とカラダ 第5回 「勉強の合間に即実践! リラックス体操」)もしてすぐに覚醒モードに入れるようになりました。なんと、朝食前に前日の世界史の復習ができるようにもなりました。

 すぐに始められないスタートの遅い人は、実は、いつまでたっても始めることができないとされています。人は物事を先送りするほど、開始することが指数関数的に困難になる脳の性質を持っているからです。逆に、いったん始めてしまえば作業興奮ということが起きてきて「乗って」きます。とにかく、すぐに始めることが肝心。

 早寝早起きの彼女は、めまいも無くなり、時々起きる頭痛は専用の薬で解決していきました。起きられないのは、血圧が低いからじゃなくてリズムが崩れていただけだったわけです。時間に沿った脳の生理的なリズムに、意思の力で逆らうことはできません。

 彼女は今や、臨床心理士スクールカウンセラーになろうと大学院を目指しています。先日お会いしたときには、「でも、ときどき昔のクセで朝寝坊しちゃうんですけど……」とぺろっと舌をだして笑っていました。


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